2025.04.10 12:00論語読みの論語知らず【第104回】 「『韓非子』からみるトランプ2.0」・トランプ2.0と忠誠心の問題「アメリカ・ファースト」のために矢継ぎ早に政策を打ち出しているトランプ2.0では、大統領への忠誠心が重視されているのはよく報じられている。第1次トランプ政権では、大統領が気まぐれな決断を行って国を危うくさせないように、側近や閣僚たちが「サボタージュ」...
2025.03.15 06:00論語読みの論語知らず【第103回】 「孔子は戦争と軍事に何を語ったか」・乱世に生きていた孔子古代中国、春秋時代が後半に入ると周王朝の封建制はゆらぎ、各国が覇権を競う乱世となった。その中にあっても孔子は儒教でもって、人間が本性として持つ倫理の回復を目指し、教育によってそれが向上させられる可能性を信じた。国や共同体において倫理が分かち合われることを目指...
2025.02.27 01:00論語読みの論語知らず【第102回】 「生き残りのために形を変えていく思想」・怪力・乱神を語る古代生き残るために与えられた環境へと適応して形を変えていくのはなにも生物だけではない。人間が編み出す思想にもそれは当てはまる。儒教(儒学)の創始者は孔子であるという表現は適当ではあるが、孔子がオリジナルを編み出したわけではなく、孔子よりも前の時代にその原型といえ...
2025.02.09 11:00論語読みの論語知らず【第101回】 「「夔神鼓」(きしんこ)と祭礼」・神話と祭礼孔子が活躍するよりもずっと前の古代。人間は「神話」という形を頼りにして自然の仕組みを知ることに努めた。それは古代中国に限らずに全世界に概ね共通のことでもあり、それぞれの領域で神話が生まれることになった。神話を尊ぶための祭礼が編み出されて、それを執り行うことが共同体の秩...
2021.12.24 08:00論語読みの論語知らず【第100回】 「命を知らざれば、以て君子と為る無きなり」「論語」について書かれた本は、ある程度の売れ行きが平均的に見込める。いわゆるモノを書く人のなかで、論語を題材にして本を書きたがる人は結構いる。以前そんな話をある編集者から聞いたことがある。価値観が入り乱れる現代社会において、少なくとも論語がいまでも一定の価値を見出されている証とは...
2021.12.10 08:00論語読みの論語知らず【第99回】 「然る後に松栢の後れて彫(凋)むを知る」文字による記録が存在しない時代、農業も発達途上で文明らしきものがなかった先史時代の人類が、どのように暮らしていたかについては見解が分かれている。平和裏に共存していたのか、戦闘が絶えることなく発生していたのか、かつては前者の考え方に軍配が上がっていたのが、近年では考古学や文化人類学...
2021.11.26 08:00論語読みの論語知らず【第98回】 「異端を攻むるは、斯れ害あるのみ」「子は怪力・乱神を語らず」(老先生は、怪力や乱神(怪しげな超常現象についてはお話しにならなかった)は論語の有名な言葉だ。この一文の解釈をいかにするかは深遠なテーマでもあるが、後世は一つの解釈が敷衍され、儒学の「正統」とされた朱子学では「あの世」など無いとされた(「この世」と向き合...
2021.11.12 08:00論語読みの論語知らず【第97回】 「百里の命を寄すべく、大節に臨みて奪う可からず」少年の頃の愛読書である「三国志」(三国志演義)。私にとって諸葛孔明はとても謎めいた人物であった。「三国志」自体は小説、漫画、アニメ、映画、人形劇などいろんな媒体で世の中に提供されてきており、登場人物の描写はどれも際立っていて面白い。人徳に優れた劉備、智謀に長けた曹操などはわかりや...
2021.10.29 08:00論語読みの論語知らず【第96回】 「之に居りて倦むこと無く、之を行なうに忠を以てす」11月10日より全国の書店で拙著『戦略思想史入門-孫子からリデルハートまで』(西田陽一・ちくま新書)を発売させていただく。先ほど編集長が見本を持ってきてくれ、順調に印刷が進んでいるとの知らせに御礼を申し上げた。目の前にあるのは1冊の本だが、書き上げるにあたってはその100倍の書籍...
2021.10.15 08:00論語読みの論語知らず【第95回】 「俎豆の事は、則ち嘗て之を聞けり」「ドン ドン ドーン ドン ドン ドーン」と深夜に門前から響き渡ってくる陣太鼓。これを邸内の布団のなかで聞いた剣に覚えある清水一学は呟く。「これは一打ち、二打ち、三流れ。山鹿流の陣太鼓。しまった!」。とっさに枕元の刀に手をかけつつ、身を一気に起き抜けて寝所を飛び出して防戦に向かっ...
2021.10.01 08:00論語読みの論語知らず【第94回】 「丘 未だ達せず。敢えて嘗めず」筆名は「二畳庵主人」、号は「孤剣楼」を使われる加地伸行氏は漢文学者であり、かつて若かりし頃に出版された「漢文法基礎」は、1970年代から今日まで何度かお化粧直しをしながら売れ続けている。本文の語り口調は軽妙でスムーズ、漢文の文法書という重々しさを巧く薄めている。加地氏がこの本を執...
2021.09.17 08:00論語読みの論語知らず【第93回】 「微子 之を去り、箕子 之が奴と為り、比干諫めて死す」9月初頭にネット上で「「仕事は仕事」アフガニスタンの元大臣 ドイツでピザ配達する日々」との見出しで始まる記事を読んだ。サイード・サダート氏なる50歳の男性は2016~18年にかけて、アフガニスタン政府で通信・IT大臣を務めていた。不本意ながら職を去るがその理由は政府内に汚職が蔓延...