2025.11.21 08:00兵は国の大事なり~戦略の業~ 【第9回】 「アテナイとスパルタの外交前哨戦が見せるもの」・生々しい外交戦と現代への教訓台湾有事の可能性を巡る日本の国会でのやり取り、そこからの諸々のリアクション、今もなお日本と中国の外交当局の応酬が注視されている。各所で「発言」の切り取りや拡大解釈、法的・技術的な正しさを競い合うような議論もみられる。ただ、国会での言質だけを焦点にし、...
2025.11.15 07:00兵は国の大事なり~戦略の業~ 【第8回】 「ペリクレスの戦略と歴史が残した静かな問い」・お互いに感じる恐怖、譲れない名誉「戦争の歴史」と聞けば、剣や槍が行き交う戦いから、銃声や砲声が際限なく轟くような戦いの世界への歩みを思い浮かべがちなのかもしれない。あるいはどこか血なまぐさい者たちが戦争の勝ち負けを、机上や戦場でそれぞれの立場で必死の追求をする姿を想起するかもし...
2025.09.27 07:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第7回】 「幕末・鳥羽伏見の戦いの「X」」・鳥羽伏見で善戦していたフランス式の「伝習隊」「ああ!あれは錦の御旗だ!」と叫んで徳川方諸藩が戦意を喪失して、総崩れで前線から潰走をしたとされる「鳥羽伏見の戦い」。数の上では徳川方が約15,000で旧装備が主体、対する薩長方は約5,000で新装備を持ち、その火力の前に徳川方が敗れ...
2025.08.03 11:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第6回】 「ウクライナ戦争で「軍事ブロガー」たちが報じることの意味と『戦争論』の論理」・外れてしまった有名エコノミストの「予言」21世紀の初頭、エコノミストの長谷川慶太郎が新たな世紀の展望を当人の著書の中で語っていた。21世紀の来るべき世に楽観的な見通しを述べながら、同じ文脈の中でクラウゼヴィッツの『戦争論』を取り上げ、その価値を「完全に過去の「古典」としてのみ評...
2025.06.23 09:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第5回】 「イランの核施設への爆撃とクラウゼヴィッツ」・バンカーバスターによるイラン核施設への空爆と反応米国がイランの複数の核施設へと空爆を行ったことが大きなニュースとなって世界を駆け巡った。メディアが報ずるように米軍は6機のB2爆撃機に最新型のバンカーバスター(地下貫通型の大型爆弾)「GBU57」を搭載して12発を投下、イランが地...
2025.05.01 06:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第4回】 「クラウゼヴィッツとマリー夫人の往復書簡が語るパートナーシップのかたち」・マリーに恋したクラウゼヴィッツクラウゼヴィッツはマリー(ブリュール伯爵の令嬢)との恋愛を、数々の試練を超えながら結婚にまでどうにか漕ぎつけていったが、彼はマリーの支えと助けがあって文学・哲学・アート・音楽への造詣を深めることになった。このことは後年『戦争論』を単なる兵学書には留...
2025.03.27 04:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第3回】 「欧州・アジアでの国防費の増加と自由貿易の揺らぎ、アダム・スミスは何を語るか」・欧州・アジアでの国防費の増加欧州やアジアでは国防費が増額されていく流れにある。ドイツは債務抑制に重きを置いてきた国であったが、最近、基本法(憲法)を改正して国防費の大幅増額への道筋をつくることになった。フランスではマクロン大統領が国防費をGDP比で3~3.5%、英国ではスターマ...
2025.03.04 08:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第2回】 「トランプ大統領とゼレンスキー大統領の闘論、戦略古典は何を語るか」・二人の大統領と二つの戦略古典トランプ大統領とゼレンスキー大統領がホワイトハウスで強い言い合いとなったことは衝撃をもって世界で受け止められた。多くの有識者がこの事態を前にして、それぞれの大統領の発言や行動に支持や批判をしつつの論評が行き交っている。これから先のことは不透明ではある...
2025.02.12 09:00兵とは国の大事なり~戦略の業~ 【第1回】 「AIと軍事、古典戦略と人間の狭間」・AIと軍事の関係の深まりAIと軍事の相互関係が深まり始めている。これに慎重であるべきか、容認していくべきか、世界的にみると後者へと天秤が傾いてきている。ビジネスとしての見込みが大きくあることから企業も容認へと流れ始めており、米国グーグルは人へ危害を与える兵器や技術にはAIを応用...
2022.03.16 13:34「孫子」第40回 第6章 「管理論」(10)第9節 マネジメント上の失策軍事的指導者によるマネジメント上の失策によって組織が崩壊していくとき、それが何に起因してどのような崩壊の流れを辿るかなど、孫武は6つにわけて論じている。「故に、兵には、走る者有り、弛む者有り、陥る者あり、崩るる者有り、乱るる者有り、北ぐる者有り。凡そ此...
2022.03.16 13:18「孫子」第39回 第6章 「管理論」(9)第8節 厳格な管理法・マネジメント手法「孫子」が「不戦屈敵」を軸としながらも、それが不成立の場合は「用戦屈敵」を行使するといった哲学を持っているとこれまでに何度か述べてきた。そして、「用戦屈敵」を効果的に実行するため、マネジメントの在り方にいろいろな工夫を施すことについても触れて...
2022.03.15 12:54「孫子」第38回 第6章 「管理論」(8)「孫子」は先に触れたように「信賞必罰」を平素から組織マネジメントに取り入れることを提起する一方で、有事の際にはそれに限界があることも踏まえていた。また、「信賞必罰」に加えて将兵の仕事や任務に対する「やりがい」についても配慮するべきだと説いた。「孫子」の時代と現代を比べれば、一般的...