2017年春期講座(明治大学リバティアカデミー) 「続 『孫子』に学ぶ ~インテリジェンス・戦略という視点から」
講義録
孫子へのアプローチ
・これまでの講義では「五事七計」(道・天・地・将・法)を中心に、孫正義氏の独自整理も交えて紹介。
・新しい学び方は「テーマを決めた読み直し」。理想と現実、組織マネジメント、リーダーシップ、情報などの視点から繰り返し読む。
・孫子は論理探究型のクラウゼヴィッツとは異なり、箴言から実戦的に体得する学び方が合う。
表の論理と裏の論理
・縦糸=「五事七計」、横糸=「詭道」と「情報」。
・孫子の核心は「敵をかき乱す」こと。不戦屈敵も、戦って勝つ場合も、間接アプローチで敵を混乱させる。
・「兵とは詭道なり」=戦争の本質は欺きにある。ビジネスに置き換えれば、表は倫理・誠実を掲げても裏ではタフな戦術を忘れてはならない。
・日本で体現した例:楠木正成(千早城で補給を断ち、持久防御から攻勢へ転じた)。
インテリジェンス論の基礎
・孫子の廟算(シミュレーション)は「情報の摩擦」を見抜く知恵。
・情報とインテリジェンスを区別し、総合算定を徹底することで勝敗は予測できる。
・ビジネスで言えば、意思決定会議は客観性の高い情報評価に基づくべきで、感覚や思い込みでは危険。
インテリジェンスの実践
・利害関係者の思惑を動態的に捉える=受動型でなく能動型の情報処理。
・「諸侯の謀を知らざる者は交わること能わず」=相手の背景を知らなければ交渉は成り立たない。
・現代のビジネスでも環境・文化・利害を見抜かなければマネジメントは不可能。
判断と情意
・真の智将は利害両面を同時に熟慮する。利点の裏に不利を、不利の裏に利点を見出す姿勢が勝敗を分ける。
・判断者の好悪や過去の成功体験に引きずられる危険性も強調される。
スパイと信頼
・孫子は「用間篇」で五種のスパイ(因間・内間・反間・死間・生間)を定義。
・重要なのは、スパイとの関係を「仁義」を基盤に信頼で結ぶこと。金銭的関係だけでは不十分。
・ビジネス文脈でも、情報提供者を高く評価し、信頼関係で活用することが必要。
情報活動の意義
・諜報活動は戦争の「要」であり、三軍の行動を左右する。
・今日的に言えば、インテリジェンスに通じた部下を持つマネージャーは、多様なシミュレーションが可能になり、不測事態にも強い。
・情報活動は軍事だけでなく、企業経営の生死を決する。
まとめ
孫子は「五事七計」という表の枠組みの裏に、詭道と情報という現実的な論理を置き、戦争の核心を「敵をかき乱す」戦略に見出した。
さらに、情報収集・分析・スパイ活用などインテリジェンス論を徹底しており、それは今日の経営や組織運営にも通じる。
孫子は単なる古典ではなく、現代における情報と戦略の本質を見抜く教材である。
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