2021.12.24 08:00論語読みの論語知らず【第100回】 「命を知らざれば、以て君子と為る無きなり」「論語」について書かれた本は、ある程度の売れ行きが平均的に見込める。いわゆるモノを書く人のなかで、論語を題材にして本を書きたがる人は結構いる。以前そんな話をある編集者から聞いたことがある。価値観が入り乱れる現代社会において、少なくとも論語がいまでも一定の価値を見出されている証とは...
2021.12.10 08:00論語読みの論語知らず【第99回】 「然る後に松栢の後れて彫(凋)むを知る」文字による記録が存在しない時代、農業も発達途上で文明らしきものがなかった先史時代の人類が、どのように暮らしていたかについては見解が分かれている。平和裏に共存していたのか、戦闘が絶えることなく発生していたのか、かつては前者の考え方に軍配が上がっていたのが、近年では考古学や文化人類学...
2021.11.26 08:00論語読みの論語知らず【第98回】 「異端を攻むるは、斯れ害あるのみ」「子は怪力・乱神を語らず」(老先生は、怪力や乱神(怪しげな超常現象についてはお話しにならなかった)は論語の有名な言葉だ。この一文の解釈をいかにするかは深遠なテーマでもあるが、後世は一つの解釈が敷衍され、儒学の「正統」とされた朱子学では「あの世」など無いとされた(「この世」と向き合...
2021.11.12 08:00論語読みの論語知らず【第97回】 「百里の命を寄すべく、大節に臨みて奪う可からず」少年の頃の愛読書である「三国志」(三国志演義)。私にとって諸葛孔明はとても謎めいた人物であった。「三国志」自体は小説、漫画、アニメ、映画、人形劇などいろんな媒体で世の中に提供されてきており、登場人物の描写はどれも際立っていて面白い。人徳に優れた劉備、智謀に長けた曹操などはわかりや...
2021.10.29 08:00論語読みの論語知らず【第96回】 「之に居りて倦むこと無く、之を行なうに忠を以てす」11月10日より全国の書店で拙著『戦略思想史入門-孫子からリデルハートまで』(西田陽一・ちくま新書)を発売させていただく。先ほど編集長が見本を持ってきてくれ、順調に印刷が進んでいるとの知らせに御礼を申し上げた。目の前にあるのは1冊の本だが、書き上げるにあたってはその100倍の書籍...
2021.10.15 08:00論語読みの論語知らず【第95回】 「俎豆の事は、則ち嘗て之を聞けり」「ドン ドン ドーン ドン ドン ドーン」と深夜に門前から響き渡ってくる陣太鼓。これを邸内の布団のなかで聞いた剣に覚えある清水一学は呟く。「これは一打ち、二打ち、三流れ。山鹿流の陣太鼓。しまった!」。とっさに枕元の刀に手をかけつつ、身を一気に起き抜けて寝所を飛び出して防戦に向かっ...
2021.10.01 08:00論語読みの論語知らず【第94回】 「丘 未だ達せず。敢えて嘗めず」筆名は「二畳庵主人」、号は「孤剣楼」を使われる加地伸行氏は漢文学者であり、かつて若かりし頃に出版された「漢文法基礎」は、1970年代から今日まで何度かお化粧直しをしながら売れ続けている。本文の語り口調は軽妙でスムーズ、漢文の文法書という重々しさを巧く薄めている。加地氏がこの本を執...
2021.09.17 08:00論語読みの論語知らず【第93回】 「微子 之を去り、箕子 之が奴と為り、比干諫めて死す」9月初頭にネット上で「「仕事は仕事」アフガニスタンの元大臣 ドイツでピザ配達する日々」との見出しで始まる記事を読んだ。サイード・サダート氏なる50歳の男性は2016~18年にかけて、アフガニスタン政府で通信・IT大臣を務めていた。不本意ながら職を去るがその理由は政府内に汚職が蔓延...
2021.09.03 08:00論語読みの論語知らず【第92回】 「無為にして治まる者は、其れ舜か」小学校2年生のときだったと記憶しているが、授業のなかでときどき児童向け教育番組をみせられた。そのなかで流れていた歌に「はたらくくるま」といったものがあった。女性歌手の陽気な声がポップな感じで、「のりもの あつまれ いろんな くるま どんどん でてこい はたらく くるま はがきや ...
2021.08.20 08:00論語読みの論語知らず【第91回】 「已みなん已みなん 今の政に従う者は、あやうし」勝ち戦には乗り遅れないように。負け戦では逃げ遅れないように。歴史を眺めていると少なくとも傍流にはこうしたものが付随しているようだ。たとえば、同工異曲で何度もつくられてきた幕末物では、最後の将軍だった徳川慶喜が、1868年(慶応4年)の戊辰戦争初戦の京都を中心とした鳥羽伏見の戦いに...
2021.08.06 08:00論語読みの論語知らず【第90回】 「三人行けば、必ず我が師有り」ローマの将軍から陰謀によって一介の剣闘士に身を落とされての闘いを描くラッセル・クロウ主演映画「グラディエーター」。リドリー・スコットが監督を務めた映画であり、その評価は高い。ここ数十年で歴史の研究が進むにつれて剣闘士の実態が徐々に判明してきている。円形闘技場(コロッセウム)で大勢...
2021.07.23 08:00論語読みの論語知らず【第89回】 「勇にして礼無ければ 則ち乱す」緊急事態宣言が発せられていることを鑑みれば、現在は平時か有事かと問われたら有事となる。断続的な宣言とそれなりの制限下にある状態が年単位で続き、社会全体がストレスをため込んでいる。新型コロナウイルスへの政策や対策を批判する声は街角やネット上など至るところにあふれている。これについて...