情報を提供してくれる人間を大切にする【孫子・第7回】

「一人の人間がどれほど優秀であっても、情報、指揮、リーダーシップにおいて万能になることはできない。孫子はその辺については人間を見限っている部分がある。だから、将軍やリーダーは情報・インテリジェンスに通じるために、それを提供してくれる人間をもっとも手厚く遇して、扱いなさいと喝破しているのだ」

「確かにそんな表現がありました。たしか・・・情報提供してくれるスパイを近くに置き続けろ・・・」

「同じく用間篇の中の文言だね。『故に、三軍の事は、間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事は間より密なるはなし』(全軍の中で、諜報工作員ほど君主や将軍の近くに位置するものはなく、最高の報酬を受け取る。情報活動に関する問題以上に機密を要するものはいない)」 

「ああ、そうでした」


「スパイという生々しい言葉にあまりこだわる必要はなく、情報を提供してくれるスタッフもふくめて考えるくらいが丁度よいね」

「訳の定義をあまり狭くとらえずに読んでいくということですね」

「孫子の時代は、いまとちがってIT、衛星、カメラなどまったくない時代。情報といえば人間が集めてくるもので、だからこそこうした人間を大切にしなさいということになる」

「つまりこのあたりは、孫子のいっていることは時代遅れということになるのでしょうか・・・」


「いやそう早合点したものでもないね。たしかにビジネスでも軍事でも、いまはテクノロジーやITを駆使してデータを集め、それを分析して相当のことがわかる。マーケティングも敵情分析もそうした手段を駆使して、かなりの可能性を絞り込むことまではできる」

「そんな時代に、人間の役割はあまりないように思えてしまいますが・・・」

「だけどね、たとえばの話だよ。Y君が商社マンとして日々、仕事をするなかで、担当先の部長が実際のところ何を考えているか、ホンネは何かがわかったら、仕事が楽になると思わないかい?」

「それは楽ですよ。相手先とこちら、商品のラインナップがよくて、こちらも相当の仲介ビジネスができることがわかっていても、肝心なのは、決裁権をもっている部長がそもそもどのくらい乗り気かということですからね。それがわかっていれば、こちらだって顧客を選別できるし、無駄なプレゼン資料や見積書なんか作成しないでもすみますからね」


「それと同じようなことなのだけどね。たとえば、日本からみた北朝鮮情勢なども同じようなことがいえるだろうね」

「どういうことですか」


(第8回につづく)

※この対談はフィクションです。

***

筆者:西田陽一

 1976年生まれ。(株)陽雄代表取締役社長。作家。「御宙塾」代表。

株式会社 陽雄

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