論語読みの論語知らず【第12回】「過ちて改めず」

近い将来AI(人工知能)が人の仕事をどれだけ「効率化」するのか議論百出で本当のところはよくわからない。もっともAIと関係なくとも効率化はテーマの常で、世間ではそれが独り歩きすれば、最低限の人数で物事を回そうとするのは一般的なことだ。そして多忙となれば、各現場は目前の物事を乗り切るのに精一杯となる。人間が行う以上は、そこにトラブル、失敗やミスが付いて回るが、多忙がそれらを省みるいとまを与えないこともよくある。

一方で、効率化がイマイチでも、やはり人間が行う以上は、トラブル、失敗やミスはつきものだし、時間的余裕があるからといって十分に省みるという保証があるわけでもない。効率化の程度と人間がおこす失敗やミスは本質的にはあまり関係がないかもしれない。そして、人間学的に還元すれば、失敗やミスが続く理由は意外にシンプルなものだろう。過ちについて直面したとき、人間の性(さが)をあらわす言葉が論語にある。 

 

「子曰く、過ちて改めず、是を過ちと謂う」(衛霊公篇15-30)

  

【現代語訳】

老先生の教え。過ちを犯したのに改めない。これが真の過ちである(加地伸行訳)

 

過ちをおかしても無自覚が原因ならば気づかせるシステムをつくり改善を図ればよい。ただ、自覚してもなおそこから改めることのない態度の積み重ねは悲惨なものになる。太平洋戦争(大東亜戦争)にまつわる本を多くあるが、戦争の是非は論じずに組織論の立場から各問題点に迫った「失敗の本質」(ダイヤモンド社)を読み返すたびにこのことを考える。

 

戦争自体の是非はさておき、そのなかで人々がどのように考えていたかを知ることは学ぶところ大だ。特に、この戦争では高位の軍人として作戦全体を大枠で考える地位にあったがものが、敗色濃厚となるなかで「勝てないとは思っていたが、立場がそれを口に出していうのを邪魔した」という類の言葉とともに絶望的な戦争を続けている。巷間でよくいわれるよう「空気」(同調圧力)だったといえば終わりになるが、もう少し人間の心の奥にあるものを窺いたい。

よくいわれるのが、昭和19年7月サイパン島が陥落し、連合艦隊の多くを失った時点で、純軍事的見地からは日本が勝つことはもはや不可能ということ。そうしたことを軍中枢において重責をにない、情報も知見もあり冷静にみつめることも可能だった者が「あの時の俺の立場ではいえるはずがない」と戦後証言をやはり残している。ただ、「俺の立場」が、「俺の体面」「俺の名誉」をつよく含むのならば論外だろう。組織としての過ちを改めることは制度の在り方に帰して議論も可能だが、個として過ちはそうはいかない。


さて、引用した論語の一文だが、体面や名誉にいたずらに執着し目が曇り、本当は心の底では気づいているのに、気づかないふりをする。これを真の過ちとする。人間である以上は過ちをおかすことは致し方ないことだが、つど勇気と理性でもって改めるべきというのが本意と思う。なお、オセロ、チェス、そして将棋や囲碁でも人間はAIに勝てなくなった。この延長線上の未来にAIが「将軍」にとって代わるかどうかはわからない。

AIに「俺の体面」「俺の名誉」という概念は多分ない。だから過ちを改める作業も簡単で、故に、AIにまかせて戦うことが極めて効率的な勝利を可能とする・・・仮にこんな言葉が真実になったとしても違和感が残る。いまが過ちて改めずの路線でないことを願いたい。

 

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筆者:西田陽一

1976年、北海道生まれ。(株)陽雄代表取締役・戦略コンサルタント・作家。

株式会社 陽雄

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