書評『近現代軍事戦略家事典~マキャヴェリからクラウゼヴィッツ、リデル・ハートまで~』(今村伸哉監修、小堤盾・三浦一郎編、原書房)(学術誌『戦略研究』第33号掲載)
書評要約
『近現代軍事戦略家事典~マキャヴェリからクラウゼヴィッツ、リデル・ハートまで~』(今村伸哉監修、小堤盾・三浦一郎編、原書房)は、16世紀から第二次世界大戦前夜までに活躍した71名の軍事戦略家を取り上げ、その思想と戦略理論を体系的に紹介する事典である。
本書は「調べるための事典」であると同時に、通読することで軍事思想・戦略理論の発展過程を俯瞰できる構成となっている。マキャヴェリやグスターヴ2世からクラウゼヴィッツ、モルトケ、さらにはマハンやドゥーエ、リデル・ハートまで、各時代の人物と理論が歴史的文脈の中で位置づけられている点が特徴的である。
とりわけ、本書の意義は過去の軍事思想を単なる知識として終わらせず、現代の安全保障課題との関連を意識させる点にある。陸戦・海戦・航空戦力の変遷や「総力戦」と「限定戦争」の議論などは、今日の戦略研究を考える上で基盤となる。
総じて本書は、研究者や実務家だけでなく、安全保障問題に関心を持つ幅広い読者にとって、近現代の軍事思想を学ぶ格好の手引きとなる良書である。
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